進学がゴールになっていないか?〜生徒ひとりひとりが独自のキャリア形成法・自己分析法を確立する必要性〜
大学受験をゴールとしてしまっている現状について
《阿部》指導された生徒さんは、ほとんどが大学受験志望ですか?
《中村》大学志望もしくは専門志望が多かったです。中には就職希望者も。
大学進学を選択する生徒さんの傾向として やりたいことが分からないから大学受験 あるいは偏差値や大学のブランドで大学受験を志望する
目の前のことについて頑張る力は身につきますが、先の将来働くことについてイメージできているのかしらと思うことはありました。
《阿部》確かに。計画を立てて実行する、達成する力はつくけど・・というところですよね
《中村》そうですね。 一方で、専門学校志望・就職志望の生徒は、職業レベルで考えられている。(十分に深められているかは別として)
高校ではとりあえず進学させるということが優先順位として高い印象で、先のことをイメージしずらい環境なのではないかなと思うこともあります。いかがでしょう?
《阿部》実際、高校の先生としても、大学進学を前提としての指導にはなっていました。
A大学のB学部に行きたいんですと希望が決まっている生徒は安心。 どこに進学したいかわからない生徒には、その先の就職のことを考えさせました。 例えば、何が好きなのか、どんな強みを活かして働きたいか等
でも今考えていると、希望が決まっている生徒さんも、先のことを考えさせて自己分析を手助けしてあげられたらよかったなと思います。 進路を決めるという大前提をまずクリアすることが優先順位として高かったと思います。
とはいえ、担任一人で進路、キャリアの設計は難しいですし、 そういうシーンでさゆりさんのような人が必要じゃないかな〜
《中村》現状の学校の職業・進路担当だけだと、単なる「窓口」の役割になりかねないので、キャリアを具体的に個々にサポートしていく常駐キャリアコンサルタントないしは常駐キャリア教育コーディネーターが必要ではないのかと感じますね。
中には、「偏差値重視で大学を選んで、選択肢を広げておきさえできればいいのでは?」とか 、「今は将来のこととか無理に決めなくても、ぼやけていていいんじゃないのか?」とか、そういう大人の意見もあるかもしれないです。
しかし、考え方・内省の仕方はいずれ必要だから、中高生のうちに身につけておいた方がいいと思うんです。いざ就職時の自己分析のやり方ってなかなか教わることできないじゃないですか。
《阿部》就職のときに、自己分析を初めてするのではなく、 もっと若いころ、低学年のころからやってもいいのではないかというのは私も思いますね。
一応、自己分析は学校でも進路指導でやっていたりするんですけど、体系的なものはないんですね。 さゆりさん的には、授業に組み込んだほうがいいと思う?
《中村》週1や月2,3ぐらいでも、日々定期的に授業でやってもいいと思います。
例えば「この1週間を振り返ってみる」ということも、機会がないと、振り返ることができない。
日常の中の気づきや経験が、ただただ時間が経つにつれて、流されていってしまいます・・・。それは大事な機会を逃しているような感覚です。
《阿部》そう考えると、eポートフォリオでは変えられるチャンスではあります!
ただ、これは入試色が強いんですよ。
学校側としては、入試につなげるなら納得して導入しますよね。
自己分析は社会に出ても必要なことではあるけれども、振り返ることとか、授業に組み込むほどではないのではないかと思うかも。
学校は、モラル教育、グローバル教育など、 既存のものだけで、新しいものを柔軟に受け入れにくい傾向もある。
学校の役割も変わってきているはずなんだけど、なかなか体制が変わらない。
一時期は、国が大学受験を斡旋する動きがあったけど、30年前くらいの話で・・・ それが根ずいてしまっているというのはあるかもしれませんね。
でも今や、全員大学に行く必要はないのでは?と思うことはありますね。
高校でもキャリアに触れる機会を増やすことが大事。 興味・関心の分野を決めた子はそのベース軸から次のステップへ自立していく。
《中村》小・中学生よりも、高校生にあがるにつれて、様々なキャリアに触れる機会が減ってしまっていますね。
受験、学習が忙しいので。
《阿部》なるほど。みんなにいろんなキャリアを見せるのも大事だと思っていたけど、 一生使える自己分析の方法を体得することは大事だなと話を聞いていて思いました。
《中村》自己分析も色々な切り口・パターン・方法がありますから。
キャリア形成理論を提唱している研究者の人も沢山いらっしゃる。ひとつひとつ違った角度からキャリアを考えていて。
自分にあったものを選ぶのが大事。あらゆるパターンを教えてあげて、生徒に選んでもらうのが良いですよね。
まとめ
大学に行けば個人と国が安定なんて時代ではない。今は全員大学に行かせるよりも、自分にあった進路選択、キャリア選択をさせることの方が重要。 小中高で様々なキャリアに触れさせる。しかし、その中でも自分の志望が見つからない生徒もいるだろう。 そのために、一生使える自己分析の方法を体得しておく。
◯各ポジションの視点を切り離して考えることも必要。
・国の視点
・教員の視点
・生徒個人のキャリアの視点
進路指導における教員の役割も変わってきている。